マスクに効果はあるのか?
マスク有効性議論において重視すべき情報の順
- 一番重視すべきは、マスクで感染が収まって対策やめた国は存在しない
- 論文の裏付けが欲しいとき参照するのがマスクRCTメタ解析論文
- 2023年1月の最新のコクラン論文でもコロナ含めマスクに効果無し
- 何十年にも渡る研究でマスク効果示されず、つまり効果が無い
- 「効果が確認されてない」論は贔屓野球チームが逆転するまで延長線
世界では去年2022年の段階でコロナ禍もマスク社会も終ったというのに、2025年1月現在、日本だけマスク社会が終りません。「一目を気にして」「慣れてしまったから」という方も多いでしょうが、未だに「マスクには効果あるのでは? 少しでも効果あるのなら着けた方がよいのでは?」と考えている方も多いのでしょう。
改めてマスクの有効性について科学的に検証します。
一番重視すべき情報はマスクで感染が収まって対策やめた国は存在しないことです。陽性者・死者が出ようと対策やめた国だけが日常に戻れるという現実世界です。現実世界で置きていることや現実世界のデータが一番重視すべきことです。
これがほぼ全てであり、現実世界の現象を何よりも重視すべきで、これで話は終ってもよい位です。
どうしても論文の裏付けが欲しいときに参照するのがマスクに関するRCTメタ解析論文です。コロナも含んだ何十年にも渡る研究のRCTメタ解析でマスクの効果は示されいません。つまり効果が無いということです。
「結論は出ていない、今後の研究が必要」というのは「効果があるという結果が出るまで続ける。その間は効果があるかどうかは不明であって効果が無いと結論できない」と言っているのに等しく、つまり「効果が無い」と言えるタイミングは永遠に来ません。贔屓野球チームが逆転できるまで延長戦をしているようなものです。
コロナ禍が始まり、やたらとエビデンス、エビデンスと騒がしくなりましたが、一口にエビデンスといっても、図のようにレベルがあり、エビデンスレベルが高いもの低いものがあります。なお富岳のシミュレーションはエビデンスとしては認められません。これは後ほど解説します。
最高レベルのエビデンスはランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial, RCT)のメタ解析と言われるものです。これはRCTの複数論文の質を評価し(システマティックレビュー)、質が高いとして選び出された複数の論文を統合して結果を出します。
インフルエンザなどの呼吸器系感染症の感染防止にマスクが効果あるのか、RCTメタ解析論文として、2020年5月の香港大学の論文Xiao2020[1]があり、マスク着用に効果は認められないとなっています。数十年の論文の解析結果という最高レベルのエビデンスとなっています。この論文は驚くべきことに、マスクを推奨してきたCDC(米国疾病対策予防センター)のページ[2]にも載せられています。CDCはマスクに効果が無いことをページに掲載しながらずっと推奨してきたことになります。
Jefferson氏も2020年11月に同趣旨のRCTメタ解析論文を公開し、2023年1月にはコロナも含めて内容を更新した論文Jefferson2023[3]を公開しました。やはりマスクに効果はありませんでした。後で詳しく解説します。
マスクに効果は認められないとするRCTメタ解析論文があることは分りました。しかし逆の結果の論文が出ること自体は珍しくありません。そこでマスクは有効だとするRCTメタ解析論文を探してみます。
16のRCT論文のメタ解析論文Tran2021[5]で、N95マスクをフィッティングテストをした場合33パーセント感染リスクが下がったという結果はありますが、有意な結果ではありませんでした。フィッティングテスト無しや不織布を使った場合の感染リスク抑制効果はそれより更に劣っています。また数十や100以上の論文を解析した論文にChu2020[4]、Tran2021[5]、Howard2021[6]などがあるのですが、RCTは無かったりごく僅かであったりで、代りに症例対照研究ばかりを集めています。
2021年に発表されたコロナ禍中の研究として、有意差をもってマスクが有効だとするバングラディシュの RCT 論文Abaluck2021[]はあります。しかし一方で有意差は無かったとするデンマークでのRCT論文Bundgaard2021[9]もあります。上で述べたJefferson2023[3]では両方を含めてメタ解析しても有効性は認められないと報告しています。
2022年にマスクが有効だとするRCTメタ解析論文Li2022[10]も出ましたが、コロナ禍での論文は組込むれておらず、実施した実験期間で論文を分け、特定のRCT論文の比重を多くなるようにすることで有意な結果となる操作が行われています。こちらも後で解説します。
マスク・感染対策を誇っていた日本の感染状況は世界平均超え
- 2021年夏の第5波から新規陽性者が世界平均を超え
- 2022年1月の第6波から死者においても世界平均を超え
- 2022年夏の第7波は圧倒的な陽性者
グラフは横軸が日ごとの時間推移を示し、縦軸は上のグラフが人口当りの陽性者数で下のグラフが人口当りの死者です。2021年夏の第5波で新規陽性者が世界平均を超えるようになり、2022年1月の第6波から死者においても世界平均を超えるようになってきました。第7波は圧倒的な陽性者となっています。これでいてマスクに効果があったと言えるのでしょうか?
解説/Explanation
日本は綺麗好きでマスクなどの感染対策が優れていので被害が少ないという認識を持っている方が多いと思います。しかし世界と比べると最早そんなことは言えないことが分ります。
専門家のいう感染対策には全く効果は無かった
- マスクは個人の判断と改めて政府が通知した2022年3月13日の死者数61人
- 東京オリンピック開催時からの波のピーク65人、解除日死者数と変らず
- 最初の緊急自体宣言時は3人
- 専門家の提言で多くのインバウンドを見込めたオリンピックをふいに
東京オリンピック開催時から続く波のピークは65人。解除の日の死者数とほとんど違いません。けれども海外来客不可、また無観客でオリンピックを開催していました。その後も波が3回来て 1日400人の死者を計上した後、マスクを解除することになったのです。
最初の緊急自体宣言時に至っては 1日に3人ほどです。
マスクに関する政府の判断基準に全く何の合理性もありません。専門家のいう感染対策には全く効果は無かったのです。その専門家の提言に従ってしまい多くのインバウンド、觀光客が見込めたオリンピックをふいにしてしまったのです。
解説/Explanation
マスクは個人の判断と改めて政府が通知した2022年3月13日の新規死者数(7日平均)は 61人を計上しています。
参考文献
- XIAO, Jingyi, et al. Nonpharmaceutical measures for pandemic influenza in nonhealthcare settings—personal protective and environmental measures. Emerging infectious diseases, 2020, 26.5: 967., https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7181938/
- https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/5/19-0994_article, https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/5/19-0994_article
- JEFFERSON, Tom, et al. Physical interventions to interrupt or reduce the spread of respiratory viruses. Cochrane database of systematic reviews, 2023, 1., https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD006207.pub6/abstract
- CHU, Derek K., et al. Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis. The lancet, 2020, 395.10242: 1973-1987., https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31142-9/fulltext31142-9/fulltext)
- TRAN, Thach Quang, et al. Efficacy of face masks against respiratory infectious diseases: a systematic review and network analysis of randomized-controlled trials. Journal of Breath Research, 2021., https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1752-7163/ac1ea5/meta
- HOWARD, Jeremy, et al. An evidence review of face masks against COVID-19. Proceedings of the National Academy of Sciences, 2021, 118.4., https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2014564118
- TALIC, Stella, et al. Effectiveness of public health measures in reducing the incidence of covid-19, SARS-CoV-2 transmission, and covid-19 mortality: systematic review and meta-analysis. bmj, 2021, 375., https://www.bmj.com/content/375/bmj-2021-068302
- ABALUCK, Jason, et al. Impact of community masking on COVID-19: A cluster-randomized trial in Bangladesh. Science, 2021, eabi9069., https://www.science.org/doi/full/10.1126/science.abi9069
- BUNDGAARD, Henning, et al. Effectiveness of adding a mask recommendation to other public health measures to prevent SARS-CoV-2 infection in Danish mask wearers: a randomized controlled trial. Annals of internal medicine, 2021, 174.3: 335-343., https://www.acpjournals.org/doi/abs/10.7326/m20-6817
- LI, Hui, et al. Efficacy and practice of facemask use in general population: a systematic review and meta-analysis. Translational Psychiatry, 2022, 12.1: 49., https://www.nature.com/articles/s41398-022-01814-3
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